御旨と海 第84話

 皆さんは、先生がなぜそんな立場でマグロ釣りを始めたか、理解しなければなりません。また皆さんは、先生がなぜこのような種類の訓練を考え出したかを理解しなければなりません。世界には四つの主要な漁場があります。一つはノルウェー近海であり、あとの三つはアメリカの沿岸にあります。その他にも漁場はありますが、主要な漁場はこの四つです。言い換えれば、皆さんがどのような種類の魚を探そうとも、その魚はアメリカ沿岸で大量に見つけることができます。

 一般的なアメリカ人が魚の価値を知らず、魚を食べないことは悲劇です。魚は一つのサイクルをなしています。すなわち魚が生まれてから死ぬまでです。魚がただ死ぬことは本当に無駄なことです。魚というものは、より大きな魚か人間に食べられるためにいるのです。魚は蛋白質とその他の栄養を多く含んでいます。もし我々が魚を食べず、ただ死んで海底に沈むのをほうっておくとすれば、それは本当に無駄なことです。

 また、六年ないし七年前に、アメリカは漁業専管水域というものを宣言し、外国の船はその海域に入ることができなくなりました。このような宣言は政治問題となっています。日本やイタリア、ドイツのように、経済の一部を漁業に依存している国々は、このような水域を設けたことに抗議をしてきました。それと同時に、アメリカ人はあまり魚が好きではありません。だからあまり魚のことに関心を持ちません。そのために漁業に対して、率先して新しいことをしようとする者がだれもいません。先生は将来に対する心配から、海を中心とした教育プログラムと事業を始めたのです。陸地において農業をするとすれば、基盤を築くまでに二十年かかります。しかし海で始めれば、わずか五、六年で結果が出始めます。海は金よりも、人間によって良く利用されることを待っているのです。問題は、人々がそれについて知らず、あまり関心を持たないことです。アメリカ人が漁業に関心を持たない理由の一つは、漁業それ自体の性質にあります。大きな船団が漁業に出かける時には、三カ月から六カ月、海にいて操業します。その間、漁師の妻は、家にいて何もすることがないので、しばしば夫以外の人とどこかへいってしまうということがあります。

 そのために、海の町で成長する若者は、漁業には一切かかわりたくないと思っています。そして彼らは、オフィスの中でできるもっと良い仕事を見つけようとして、大都会へ行ってしまいます。例えば、このグロースターの町は、二百海里水域が設定される前は非常に栄えていました。多くの外国船が出入りして、物を買ったり、荷を積み込んだり下ろしたりしていました。それでこの町の若者達は仕事を見つけて、ここで働くことができたのです。本当にグロースターは忙しく、そして繁栄していました。ところが、その漁業専管水域の宣言が出た後には、多くの若者が逃げ出してしまい、グロースターはどこかゴースト・タウンのようになってしまったのです。

 出入りする船がなく、仕事をする若者がいなければ、だれがこの町の主人となるでしょうか。ムーニー達が数年前に現れました。我々が最初にここへ来たときには、人々は「ムーニー達は最も悪い人達である」と考えました。彼らはレバレンド・ムーンを何か恐ろしい妖怪でもあるかのように見て、レバレンド・ムーンとムーニー達を追い出そうとしました。しかし実際には、ムーニー達は良い人の中の最も良い人であろうとしています。今や人々の態度も、非常に意地悪であった昔から、今のように温かく歓迎するような態度へと変わってきました。

 多くの人達が豪華な船をこの町に持ってきました。彼らはデッキの上に座って、シャツから大きなお腹を出して、我々に向かって「ヘイ、お前達はだれだ。お前達は何をしているのか」と叫びました。彼らは非常に意地悪な心を持って、そういうことを言ったのです。最初のうちは、だれもマグロ釣りについては何も知りませんでした。我々はさまざまな針やその他のものを買いに回りました。何人かのメンバーは先生と共に行きましたが、彼らもまた何も知りませんでした。すると人々は店の中で「ああ、あれはレバレンド・ムーンに違いない」とささやいたものです。ある時などは、先生が店に入っていこうとすると、店はドアを閉めてしまい、「入ってくるな」と言いました。そこで先生は直ちに「ドアを開けろ」と言ったものです。

 最初のころ、先生はその店の主人が持っているある種の特別な釣り具を求めました。しかし店の人達は、それを先生に見せようとはしませんでした。それどころか先生が望んでいた物とは違った釣り具を出してみせました。先生はこうしたさまざまなことを耐え忍びながら続けてきました。先生は、自分自身が利益を得たくて行ってきたのではありません。これらの海の町を再び繁栄させたいと思ったから行ってきたのです。

マグロ釣りの背後のビジョン

 先生の目標は、アメリカの海岸都市を再び発展させ、世界中の人々に食料を供給するために、魚や海産物を輸出できるようにすることです。皆さんの中には、なぜグロースターのような小さくてつまらない町に呼ばれたのか、不思議に思っているでしょう。皆さんは、迫害や困難な状況を克服する先生の精神を相続しなければなりません。なぜなら、先生はいかにして世界を救い、また全世界の人にいかにして食料を供給するかというビジョンを持っているからです。

 皆さんが乗ろうとする船は、先生が設計し、メンバー達が建造したものです。九年間の経験の後に、先生はグッド・ゴーの船を建造したのです。これらの船を最初に建造し始めた時、だれも経験を持っている者はいませんでした。神山は船を建造する先生の計画を初めて聞いたとき、全く途方に暮れていました。彼はショックを受けた顔をして「何ですって、我々が漁船を建造するんですか」と言いました。彼は先生がそのような船を造ることを先生が言い出さないことを願っていましたが、先生は「最初の年は百五十隻を建造しなさい」と言ったのです。

 そのことを考えてみなさい。そのように多くの投資をしてでき上がった船が、その船の価値について何も知らない、全く未経験のメンバー達に一隻ずつ与えられたのです。これらの船をもって、メンバー達はいかにしてマグロを釣るか訓練を受けました。我々が建造した船一隻ごとに、非常にたくさんの汗と涙と祈りが込められていました。皆さんはそれを理解できないかもしれませんが、そのような精神がそれぞれの船の中に込められています。もし皆さんが本当にこのことを理解するならば、皆さんは船に乗るときに涙を流すはずです。先生が初めてグッド・ゴーに乗った時、先生は泣いたでしょうか、それともあまり深刻に考えずに笑ったでしょうか。皆さんはどう思いますか。だから、皆さんはふさわしい態度を持って、これらの船に連結されている霊的な、かつ国際的な因縁を相続するために祈らなければなりません。世界中の国々が、これらの船の建造を助けるためにメンバーを送りました。そしてそれらのメンバー達は、この船を建造するために彼らの汗と涙を投入したのです。だれも何も分かりませんでした。彼らは文字通り一から始めたのです。だれもどのような材料を買ったら良いのか、何を最初にしたら良いのか知りませんでした。先生は船一隻の価値は将来は十万ドル、いや百万ドル以上の価値になるだろうということを知っています。なぜならば、人々が「これはレバレンド・ムーンによって造られた船である」と言うからです。このために、先生は船を建造するメンバー達にできるだけ最高の質の材料を買うようにと指示しました。彼らは中途半端なものではなく、最高の水準の船を建造しなければなりませんでした。

 将来いつの日か、五十州の各地が、たとえ州議事堂を売ったとしても、ワンホープを買うであろう事を先生は知っています。ところが、統一教会メンバー達の中には、これらの船を見たくもないし、これらの船から逃げ出したいと思っている人達がいます。そういうことを先生は目撃しています。先生の目標と願いは、この船の中に投入されているのにもかかわらず、他のアメリカのメンバー達はそのことを理解せず、この船から逃げようとしています。

 皆さんが、先生がオーシャン・チャーチを始めた時からの御言葉を読めばそのメッセージがいかに重要で、いかに真剣なものであるかが分かるでしょう。しかし先生がそのような説明を与えた後でさえも、多くのメンバーがこのオーシャン・チャーチの活動から離れていきました。それは恥ずかしいことですが、先生はあきらめることはできません。先生はこれをアメリカの若者達に与えたいと思っていましたが、彼らはその機会を得ようとはしませんでした。だから先生は、若い日本のメンバー達を連れてこなければなりませんでした。最も価値のある貴重な宝を見つけるためには、最も困難な道を行かなければなりません。それが真理です。

 今年の夏、ここにいるアメリカのメンバーは自発的にここに来たのですか。それとも、ここに送られてきたから来たのですか。皆さんは本当にここにいたいと思いますか。まだ先生は皆さんを信じられません。皆さんはそれを先生に示さなければなりません。これまで非常に多くのアメリカのメンバー達が、このオーシャン・チャーチの活動から離れ、逃げていくのを見てきました。もちろん、ある者にとってはそうする十分な理由があったかもしれません。先生はただだまって、彼らが来ては去っていくのを見てきました。しかしその間、先生はこのオーシャン・チャーチの努力に対する先生の目標と先生の精神を決して変えませんでした。なぜか、それは先生がその価値を知っているからです。

 もし、アメリカの若者である皆さんが釣りに出かけて行くならば、だれが皆さんに指をさすでしょうか。だれもいません。ところが先生が韓国人であるがゆえに、先生に対しては皆が指をさしたのです。皆さんは、いかなる困難な状況の中でも、いかなる迫害の中でも、皆さんが、通過するすべてのものは、先生が皆さんの前に通過していることを覚えていてください。分かりますか。先生は決して引き下がることはしません。常に前進します。人々は今年になって「レバレンド・ムーンは昨年ダンベリーの刑務所にいたのが、出所してきた。彼の運動は彼がダンベリーにいる間に少し衰退したに違いない。彼らは昨年二十隻かそこらの船を出したが、今年は十隻かそこらしか船を見ないだろう」と言ったかもしれません。しかし先生はそうではなくて、今年七十隻の船が漁に出るようにと命令しました。皆さんはそのような精神を持っていますか。

 先生は、皆さんは外部のアメリカの若者と同じだと思います。皆さんは同じタイプです。皆さんは「そうではない」と叫んでいます。しかし同じタイプだと思います。どう思いますか。本当ですか、本当ではありませんか。先生は皆さんを信頼することはできません。皆さん、先生に見せてくれなければなりません。皆さんが実績を持ってくるときに、他の若者とは違っていることを先生は知ることができます。今から我々は異なった道を行くのです。それができますか。手を挙げなさい。できますか。先生の話を理解できなかった日本のメンバー達は、手を挙げる機会を逃がしました。皆さんが乗っている船は、世界の漁船の中でも最高のものであることを忘れてはいけません。そしてそれがレバレンド・ムーンによって造られたものであることを忘れてはいけません。我々がこの船を造ったのであり、ムーニー精神がこの船を造ったのです。我々はお金をもうけたいからではなく、アメリカの精神を再びよみがえらせたいと願ったからです。

 このグロースターの町自体が消え去るまで、我々は毎年ここに来るでしょう。我々はこの町の面倒をみます。我々がこの海の面倒を見るのです。今晩、ここには約二百人の人がいます。誰しもが同じ状況の中にいます。全員が二本の手と二つの目と、そして手足は無傷でいます。先生は皆さんと同じようなものを持っていますが、しかし人々を指導する能力とか、戦う精神とか、物事をあきらめないことは、ここにいる二百人を合わせた以上の能力を持っています。その違いは、決意と献身、つまり精神の中にあるのです。

Atsuki Imamura