御旨と海 第54話

海と未来

 人間の価値とは何ですか。先生はどうですか。先生の価値は何ですか。先生は宗教指導者です。多くの人達が先生。腹を立て「どうしてこの男は教会に留まっていないのか。どうして漁にやって来るのか。どうして彼は他にもたくさんのことをやっているのか」と言います。先生もそれについて時々考えます。先生は式服を着て、一日中教会に留まっていることもできます。そうすることは容易なことです。自分で始めたいろいろな企画に気を使わなくてもすみます。既にたくさんの企画が行われていますが、さらにその数は増えるでしょう。もしキリスト教がその目標と理想をすべて達成していたならば、先生はこんなにいろいろやる必要がなかったのですが、現実はそうではありませでした。反対に、キリスト教徒達は先生がやっていることを真剣に考えもせず、猛烈に反対して来ます。先生を支持した人が今まで誰かいましたか。

 たとえ、統一教会のメンバー達が先生を支持するとしても、まず企画を始め、その企画についていろいろ説明するのは先生です。先生の家族でさえ、先生のことをすぐには理解できませんでした。この世界が先生を受け入れるということが、どうしてこれほど難しいのですか。それは、先生を受け入れるためには多くの宗教指導者達が自分の考えを変えなければならないのですが、それを彼らはやりたくないからなのです。ある人達は先生を称賛し先生を助けたいと思っているのですが、それと同時に、先生の鋭い洞察力を恐れています。

 共産主義はその背後に思想体系を持っています。共産主義者を導く思想です。しかし、民主主義社会はそういう統一した思想というものを持っていません。しかし、レバレンド・ムーンの思想は共産主義の思想を凌駕しています。そして彼らはそれをはっきり知っています。彼らはアメリカ合衆国の軍隊のような物質的な力は恐れません。その面での競争は既に終わっています。彼らの方が勝利者です。しかし、統一哲学は彼らにとってもっと大きな問題です。彼らはそれを遥かに恐れています。

 先生は思想及び哲学から初めて、あらゆる分野で新しい道を開拓しました。そしてたらに、韓国やドイツの工場のように、経済企画、ビジネス、技術企画をどのように始めるべきかについても示して来ました。それなのに、どうして先生はオーシャン・チャーチを始めたのでしょうか。どうして先生はそれをそんなに重要視するのですか。皆さんも知っている通り、先生は明けても暮れても海の上で働いています。どうしてそういうことをやっているのですか。皆さんは、先生が以前この問題について語ったのを聞いたことがあると思います。

 海は孤児なのです。海を愛し、海の面倒を見る主人とか真の所有者という者が一人もいません。水産業は衰退し、身動きが全く知れない状態にあります。数年も経てば、人類は陸地だけで生活することが困難になるでしょう。人口は今四十億に近いのです。そして十倍の速さで増大しています。一体どうなるのですか。陸地は混雑して来ます。農耕面積が少なくなり、その上人口が増えます。人口問題は、とても深刻な二つの問題のうちの一つなのです。もう一つは汚染問題です。これらの問題を新しい観点から見ることができない所に問題があると先生は思います。汚染の中で最悪のものが空気汚染、つまり車や工場などから出る排気ガスによる汚染です。将来、排気ガスを出すものには何でも制限が敷かれることになるでしょう。料理でさえ制限の対象になるでしょう。余計な煙とか排気ガスはどういう種類のものであれ、大目に見られるということはなくなるでしょう。

 このことは、余り料理していない食べ物を食べる、つまり生の食べ物、生野菜、生魚をもって食べるようになるということを意味しています。いずれにせよ、生ものは健康に良いので、人々はそれに目を向けるようになるでしょう。しばらくの間、人類は宇宙空間に逃避し、そこで生活をしようとするかも知れません。しかし難しい問題が多く出費が重なるので、やがて地球に戻って来るようになります。従って海の将来は極めて重要となります。魚は良い食べ物ですか。十年か二十年前、アメリカ人達はよもや生ものを食べるなどとは思いもしませんでした。まして生魚を食べるなどとは夢想だにしませんでした。しかし今、彼らは日本レストランへ行って寿司とか刺し身を試食しています。

 もし魚が人間の主食になるとすれば、どういう魚が最も適しているでしょうか。我々は大きな魚を生産し、その特性を全部利用しなければなりません。どういう魚を用いるべきですか。鯨? マグロ? 他には? 鮫! 実際問題として、多くの人々の口を満たすものとしては、鯨は余り良いものとは言えません。大き過ぎるし、一頭の親からは一頭の子供しか生まれて来ません。また妊娠期間が長すぎます。

 ではマグロと鮫はどうでしょうか。その肉は最高の味を持っています。本当なのです。皆さんはそれを味わったことがないかも知れませんが、先生はいろいろな種類の鮫をいろいろな方法で味見した経験があります。鮫は乾燥肉として良いのです。だからこの二種類の魚は、多種多様の魚の味を提供する上で最高です。

 日本の人々は今、マグロの養殖方法が研究しています。これは彼らにとっては極めて真剣な産業であり、我々が思い描く将来にとっても重大な意味を持っています。ここで次のことを考えてみましょう。一本の雌のマグロは、一回の産卵で五十万個から三百万個の卵を産みます。さて、自然条件の下ではそれらの卵のうち、ほんの数個が生き残って幼魚となります。ほとんどの卵は食べられてしまいます。それから、最初の数年間生き残るのもほぼそれと同じ位難しいので、成熟するマグロはほとんどいないことになります。

 大例の危険を免れることができる大きさまで達するのに、約二年かかります。十分成長したマグロは、七十五ノットから百ノットの速さで進むことができます。それは「逃げる」時の速さです。しかし普通の速さで泳いでいる時は二十ノットから三十五ノットで進みます。それでもたいしたものです。マグロの体の構造を研究すれば分かるのですか、この魚は早く泳ぐように創られています。鮫も速いけれどもマグロにはかないません。マグロは全部のひれを体に付け、魚雷のような形になります。またマグロは速い速度で泳ぐだけでなく、長距離の旅をします。世界中を駆け巡るのです。

 成熟したマグロは、しばしば七百ポンドから八百ポンドに達します。一本のマグロを捕まえると、調理できる肉の部分が八十パーセント位ですから、約五百五十ポンドから七百五十ポンドの肉を使用することができます。それほど多くの肉を人々に提供します。大低の人間は毎日二、三ポンドの肉を食べるのですが、一または二ポンドに減らしたほうが良いでしょう。もしそうなれば、一本のマグロで五百人から六百人を満足させることができます。百本のマグロを釣ればその百倍の人々を賄えます。

 魚は、余す所なく何らかの目的に用いることができます。鮫の皮はジャケットとか靴に用いられます。それは極めて長持ちし、しかもでこぼこしています。その歯からは宝石細工ができます。できるんです。ある時、大貫が鮫の肉を乾燥し、それをくん製にしてはどうかという素晴らしいアイデアを思い付きました。後になって彼は諦めたのですが、それは正しい考えでした。魚はどんな部分でも使えます。残りの部分を砕いて、それを魚粉にすることもできます。またそれを使ってパンを作り、人々の口を満たすこともできます。それは人々の腹を満たすだけでなく、共に蛋白質も提供します。これがアフリカではどういう意味を持つか考えてみるのです。魚に関する限り、無駄な部分というものはありません。

 では、何百本あるいは何千本というマグロを捕るとして、我々はそれをどもで養殖できるでしょうか。囲いをして、その中に入れるというようなことはできません。しかし海全体をマグロで一杯にすることはできます。だから、漁師達はその水揚げ方法を開発しなければならなくなるでしょう。マグロの寿司とか刺し身の人気が高まり始めています。誰がこういう調理法を見つけたのですか。白人がマグロの寿司を最初に見つけていたとしたら、将来世界の人々はマグロを食べることができなくなっていただろうということを、先生は考えたことがあります。もう既にすべてのマグロが捕りつくされていたことでしょう。

 我々はあらゆる種類の食べ物を海底に植えることができます。それについて研究しなければなりません。しかしその可能性は、我々の所で立ち消えになってしまう可能性を持っています。海はとても広いのです。しかし我々の心はそれに比べて、まだ余りにも小さ過ぎます。急には莫大な可能性が秘められています。しかし、皮肉にもアメリカの若者達は漁をする生活様式から離れつつあります。グロースターが良い例です。以前そこには漁業面における世界の中心だったにもかかわらず、今ではもうさびれかかっています。魚がいなくなったからではなく、若者達がいなくなったからです。そういうことが起きつつあります。

 多くの漁師達が何日も何週間も続けて漁をします。それでもたいしたお金にはならない、だから夫と妻はしばしば喧嘩をします。そして彼はまた海に出ます。ところが、帰ってみると妻は家を出てしまっています。そのように、若者や漁師の妻達は漁生活に見切りを付けてしまっています。ということは、遂には漁師自身もどこかに行ってしまうということを意味しています。

 真剣な男は、妻を失っても再婚をしようという気持ちは起こさないものですが、漁を続ける理由がなくなった場合にも同じようなことが起きます。真剣な漁師は、そういう場合漁を完全に止めてしまいます。かつて繁栄した漁師に不利になる値段を付けたり、漁師をだましたりするバイヤー達もいます。またどの港でも麻薬の密輸が問題になっています。

Atsuki Imamura