自叙伝・人類の涙をぬぐう平和の母 第48話
犠牲という一輪の花を捧げる
「この結婚には、絶対反対だ!」
「すぐに取り消せ。こんな結婚式が世の中のどこにあるっていうんだ!」
「私の娘を連れていった上に、こんな結婚をさせるなんて……ああ、悔しい」
建物の中では新郎新婦たちが花束を持って厳粛に立っているのと対照的に、外ではその親たちが群がってわめき立て、暴れています。挙げ句の果てには、練炭の灰を投げつけ、それが中にいた新婦にかかるということもありました。
一九六〇年代、統一教会の合同結婚式が行われるょうになった時、世間は非常に驚きました。そして、本来祝われるべき神聖な結婚式の場が、反対する親たちによって、修羅場になったのです。その時に受けた迫害と非難は、筆舌に尽くし難いものでした。しかし痛みと反対を乗り越え、合同結婚式はこれまで半世紀以上の間、世界各地で行われてきています。
昔も今も、家庭連合の合同結婚式は、愛と犠牲の象徴となっています。本来、愛には犠牲が伴うものです。「愛とは、自分を捨てる痛み」と詠った詩人もいます。自分を捨てなければ、真の愛を実らせることはできません。
男性は女性のために、女性は男性のために生まれました。ですから愛する人のために、自分自身を喜んで犠牲にし、奉仕するのです。
「あなたは良い大学を卒業し、良い職場にも勤めています。しかし、あなたの相手となる女性は学校をまともに出ていないし、家も貧—^いです。それでも結婚-^ますか?」
こう聞けば、ほとんどの人が首を横に振るでしょう。しかし、家庭連合の信徒たちは大きな声でこう答えるのです。
「はい、ありがとうございます」
結婚とは、互いに不足な部分を補い合いながら、相手のために一生懸命、生きていくことです。家庭連合の新郎新婦はその真理を感謝して受け入れるのですが、親たちは必死になって反対するのです。中でも最も強い反対に遭ったのが、韓国と日本のカップルでした。
「私が日帝時代に受けた苦しみを考えると、今でも虫唾が走る。なのに、その怨警の国の娘と結婚するとは……。うちの家系に日本の嫁を入れることは絶対にできない!絶対ダメだ!」イエス様は、「怨讐を愛しなさい」と語られました。怨讐を愛してこそ、平和な世界を築くことができるのです。しかし、それを普通の人が実践するのは、簡単ではありません。親に認められない悔しさを抱いたまま、唇を嚙んで合同結婚式を挙げた新郎新婦たちは、結婚後も茨の道を歩みましたが、中途で投げ出すことはしませんでした。彼らは子女を生み、幸せに暮ら—^ています。
二〇一八年の秋、希望前進大会が京畿道加平郡の清心平和ヮ—ルドセンターで開催されました。「孝情スピーチ」という時間に、全羅南道の長城教会に所属する女性が舞台に上がり、証しをしました。
彼女は日本で公務員として、不自由のない生活をしていましたが、祝福結婚をして、一九九八年に韓国に嫁いできます。甘い新婚生活を期待していた彼女でしたが、実際にはそのような平凡な幸せすら、訪れることはありませんでした。
てんかんの持病があった夫は、普段は落ち着いていても、ストレスを受けると発作を起こしました〇そのうち、薬の副作用からか、次第に無気力となり、どんなことにも関心を持たず、感動を覚えることもなくなっていったのです。彼女は、夫と離婚して日本に帰ろうという思いで頭がいっぱいになったといいます。
そこで、HJ天宙天寶修錬苑に行って解決を願う祈りを捧げたら、少しは気持ちが楽になるだろうと思い、修錬苑で神様にすがって祈ったのです。
すると数日後、突然、天から声が聞こえてきました。
「愛する我が娘よ!私がお前を愛するほどに、私はお前の夫のことも愛している。体が弱く、寂しい思いで暮らしているかわいそうな息子だ。お前が私の代わりに、面倒を見てくれないだろうか?」
彼女はその場で心から悔い改め、痛哭しながら赦しを乞いました。
その後、心を開いて夫を愛していく中で、神様は彼女に、かわいらしい男の子を授けてくださいました。すると夫にも、変化が現れたのです。体が健康になり、働き口も見つけられて、家庭が安定しました。今は五人の子女を育てながら、幸せに暮らしています。
大会が終わって少ししてから、在韓の日本人宣教師の集会を持ったのですが、韓国全土から四千人を超える日本人婦人が集まりました。ちょうどその日が誕生日だった数人の婦人にささやかなプレゼントを渡しながら、私は彼女たちに、今まで夫から誕生日プレゼントをもらったことがあるかと尋ねてみました。するとほとんどの人が、生活に追われるばかりで、誕生日も忘れて過ごしていたというのです。しかし、それに不満を持っている人は一人もいませんでした。
彼女たちはこれまで、長い人で三十年間、韓国で生活しながら、困難にぶつかるたびに神様のみ旨と真の父母を思い、乗り越えてきました。さらには、日本の過去の過ちを代わりに蕩M:するという覚悟で、犠牲を払って歩んできたのです。どれほど貴いことでしょうか。柳寛順烈士の精神を胸に刻んで、韓日和合のための活動もしています。
幸福は、あらゆるものがそろっている状態で訪れるとは限りません。不足なものがある中でも感謝の思いを持てば、知らず知らずのうちに訪れてくるものなのです。自分よりもはるかに恵まれない人、さらには自分の怨讐の国や民族、家系の人と結婚するときこそ、まさに神様の役事が起こり、天運が宿る幸福が訪れるのです。財産や職業を問うてはならないし、容姿に心を惑わされてもいけません。本物の人格を備えた、温かい心の持ち主となることが、最高の配偶者になる道なのです。そのようにして、自らの愛をすべて捧げるとき、価値ある人生となるのです。
韓国、そして世界各地で開催されてきた家庭連合の合同結婚式は、人類歴史上、最も神聖で貴重な行事です。これまでに祝福結婚をした新郎新婦は、数億組に上ります。今や世界のどの国に行っても、祝福家庭が必ずいます〇韓国人の夫と日本人の妻、アメリカ人の夫とドィツ人の妻など、国際家庭が幸せに暮らしています。言語の違いや生活習慣の違いなどはいずれ克服できます。大切なことは、夫婦が互いに愛し合い、神様のみ旨を実践しながら生きていくことなのです。