自叙伝・人類の涙をぬぐう平和の母 第49話

一本のあばら骨が意味すること

西洋には「偉大な男性の背後には、必ず偉大な女性がいる」という格言があります。このように、男性がより完全になるようにサボートする存在が、女性です。妻がいなければ、夫は完全にはなれません。また、女性が沈黙せざるを得ない社会では、平和と正義を実現することはできません。

さらに、女性は母の使命を全うしなければなりません。その使命とは、子女を生み、人格を備えた正しい人間として育て上げることです。それは女性だけが持つ権限であり、責任でもあります。

私は、女性たちが夫や子女から、あるいは社会から認められていない現実を、いつも残念に思ってきました。

女性はそれぞれの時代において、苦難を前にして大きな役割を果たしてきました。特に家庭連合の女性たちは、真の父母のみ言に従い、神様に#:る真なる娘、真なる妻、真なる母の責任を果たすため、世界各地で汗を流してきました。それは簡単なことではありませんでしたが、彼女たちは決して弱音を吐かず、活動に取り組んできたのです。

これまで多くの女性たちがしてきたように、世の中の風潮に従って男性の真似をしたり、その中で女性の地位だけを高めようとしたりしてはいけません。聖書には、「神は人から取ったあばら骨でひとりの女を造り」(創世記二章ニニ節)とあります。男性と女性は、対立する関係ではありません。真の愛によって自分のものを相手に与え、相手を完成させて、一つになることで、互いを共有する関係なのです。女性は、単なる男性の補助者や保護対象ではなく、神様のもう一つの性を代表した立場であり、男性を完全にもする、独立した人格体なのです。

今こそ女性は、天の法度に従い、真の父母に侍って、新しい心情文化世界を築く主人公にならなければなりません。堕落性を脱ぎ捨てて、新たにつくり上げる本然の文化、人類が切に探し求める愛と善の文化を花咲かせなければなりません。家庭の中でも真の愛の化身として、夫を抱き、真の父母の心情をもって子女を育てなければなりません。


神様の祝福が根を下ろし、本然の愛があふれる家庭を築く主役は、女性です。真なる娘の道と共に、真なる妻の道、真なる母の道を歩まなければなりません。

今後訪れるのは、女性の母性と愛、異なるものを一つに結ぶ力に基づいた、和解と平和の世界です。女性の力が世を救う時代が到来したのです。

女性は時代をそのまま映す鏡

「大会の許可は出せません」

「え……、どうしてですか?これは政治集会ではなく、女性大会です。ですから、大会を開催させてください」

「女性だろうと何だろうと……とにかく、絶対に許可できません」

一九九三年の秋、モスクワで世界平和女性連合の大会を開くことにしました。二力月ほど前から準備して、すべてのスケジユールが決まっていたのですが、突然ロシア当局が動いて、大会を開催できないようにしたのです。

当時、ボリス•エリツィン大統領が開放政策を通して改革を推し進めていましたが、その一方で、彼らは国内で行われるあらゆる集会に神経を尖らせていました。政治と関係のない女性大会であると説得しても、取り付く島もなかったのです。その後、厳戒態勢の中ではありましたが、無事大会を開くことができたのは、奇跡でした。

ソビエト連邦が解体されてからまだ間もなかった当時、ウクラィナなど、周辺国に住む信徒は、私がモスクワに来るという知らせを聞いて大いに喜びました。その信徒たちがモスクワに行こうとすれば、お金を払ってビザを取得し、何日も列車に乗らなければならないため、費用がとてもかさみます。しかし、そうやって数力月分の収入に匹敵するお金をかけて遠い道のりを来た彼らに対し、ロシアの役人たちは、大会とは別に私と会合を持つことを、許可しませんでした。

私は宿泊先で、ロシアが真の民主主義国家に生まれ変わるょう祈りました。そうしてベランダに出てみると、眼下に、信徒たちが集まっているのが見えました。彼らは顔を上げて私を見つめています。私も、彼らをじっと見つめました。私たちは言葉を交わすことすらできませんでしたが、お互いの切実な思いは、ひしひしと感じることができました。

「今は互いに抱擁もできず、手を握って挨拶を交わすこともできないが、いつかきっと熱い涙で会うことができるだろう」

そう固く信じました。彼らの頰を伝う涙を、私は今も鮮明に覚えています。

それから二十三年が経過した二〇一六年、韓国.慶尚北道の慶州で国連主管のもと、国際会議が開かれました。国連事務総長をはじめ、NGOの代表など百ヵ国から集まった四千人以上の参加者が、どうすればもっと明るい世の中をつくっていけるか、真剣に議論を交わしたのです。

Luke Higuchi