御旨と海 第68話

マグロ釣りと生活様式
1984年 7月 5日 モーニング・ガーデン


 皆さんは海を見てどう感じますか。時には雨が降り、しばしば風が吹きます。先生に何か聞きたいことはありませんか。どのようなことをするか、餌をラインにどのように付けるか学びましたか。まだですか。皆さんは自分で来たかったのですか、それとも誰かに言われてここに来たのですか。ここへ来たのは始めてですか。ここにいる日数は長いですが、皆さんはいかにして疲れを越えるかを学ぶでしょう。

 漁場であるプロビンス・タウンまでは、二時間ないし二時間半かかります。ということは、釣りは朝五時に始めますので、午前三時ないし二時にはここを出なければなりません。皆さんはそこへ行く最初の船となって、マグロのお客さんを迎える準備をしなければなりません。それが礼儀というものです。皆さんはすべてに対して準備します。マグロは既にここへ来ているのですが、まだ、それほど多くの漁師がマグロを捕っているわけではありません。このことについて我々は常識を持って考えなければなりません。彼らもここにいるのに、なぜ釣れないのでしょうか。

海の中の生活様式

 サンド・イールは季節に従って移動します。このサンド・イールの大群は南からやって来るのです。水温がまだ冷たく、水面近くでは少し暖かいのですが、低い方へ行けば行くほど冷たくなります。サンド・イールの群れを追って魚が来ていますが、まだそれほど集まって来ていません。魚はその地域に来てはいますが、ここにまだ定着していません。水温が上がると、サンド・イールは定着するようになる

 夏になるにつれて水温は上がります。そして魚は一つの場所に集まるようになりま。そこは深さが七十フィートから百二十フィートの一種の大地のような所です。他の所は深さが二百から三百フィートもあって、非常に深くて冷たいのです。大きな魚は、このサンド・イールの群れがどこにいるか知っていて、そのサンド・イールを食べるために集まって来ます。鯨やマグロはより深い場所にいますが、朝になると餌を食べるために上がって来ます。正直に言えば、それがマグロの朝食の時間です。その朝食の場所が我々が今から行こうとしている所です。

 ニシンや鯖や鱈は、マグロが餌にする比較的小さな魚です。それらの小さな魚は、温度が上がってたくさんのサンド・イールがいる場所に集まって来ます。そのような場所に我々は行きます。マグロはそのような餌場に出入りする時、決まった経路を持っています。その場所が船で行きたい場所です。それは普通、餌場すなわち岩棚の端にあります。マグロはごつごつしたものが嫌いで、なだらかな所が好きです。マグロは崖のような所には来たくありません。むしろ坂道のあるような所へ来たがります。。マグロ達は緩やかな坂道を好んで、そこを通って出入りします。

 まず皆さんは海図を勉強して、そこがどのような地形になっているかを理解しなければなりません。それからそこへ行って、実際にやってみるのです。先生はこのことを、科学的にも直感的にも研究するために、長い時間を費やしました。だからニュー・ホープ号が他の多くの船よりたくさんのマグロを釣ったのです。ニュー・ホープの周りの船もまた、たくさんのマグロを捕りました。このために、ムーニー以外の人々もニュー・ホープ号に近づいて釣りをしようとしました。

 皆さんはこういったことについて、実質的に知らなければなりません。深い感覚を持たなければなりません。皆さんは「まあ、海というのはどこでも同じで、魚は行ったり来たりしているのだから、マグロが捕れるかどうかは偶然の問題だよ」と言うかも知れません。そうではありません。全くそうではありません。偶然ということはないのです。マグロは行動の様式、すなわち習性を持っています。我々はこの習性を理解しなければなりません。より小さな魚はたくさん食べ物がある場所、棚があって、隠れて身を守ったりしやすい場所に集まって来ます これらの小さな魚は群れをなして移動します。こういった魚の群れの長さと幅が、何マイルにもわたっているのを見るでしょう。また深さも何百フィートもあるのです。そして潮の干満に応じて、これらの魚の群れが移動します。時には潮の流れが非常に強い時もあれば、また弱い時もあります。小さな魚は自分を守るために、大きな群れをなして移動します。そして彼らは、大変大きな岩のような、隠れることのできる場所を探しています。海のある一定の場所には、こういった場所がたくさんあります。だから我々は望む種類の魚を捕まえようとするならば、こういったことをも研究しなければなりません。

 例えば、我々がストライプバスを捕まえたいとします。時々この小さな魚の群れは、潮の流れが彼らを引っ張るので非常に早く移動します。従って、前の方にいる魚は、たとえ彼らがそうしたいと思っても、スピードを弛めることはできなくなります。そして岩の後ろに隠れる代わりに、岩にぶつかってしまいます。そうすると岩にぶつかた魚は、丁度頭に何かをぶつけた人間のように、ふらふらとなります。こういう場所にストライプバスがよくいるものです。小さな魚が岩にぶつかって、ゆっくりとふらふらして泳いでいる時には餌になりやすのです。こういう所でストライプバスを見つけることができます。だから皆さんもストライプバスのように考え、理論的に彼らがどこにいるかについて見つけなければなりません。

 マグロ釣りもまた同じです。皆さんはあらゆることを考え、充分に推論しなければなりません。ただどこかへ行って、海に竿を垂らし、マグロが掛かって欲しいと思ってはいけません。小さな魚は潮の流れと共に移動します。潮の流れが弱くなる岩棚に沿った場所があります。こういう所が、小さな魚が来る場所であり、それを餌とする大きな魚が集まる場所です。皆さんは海図を見て、地形が深くなっていたり、深さが急に変わっているような場所を見つけなければなりません。

 また皆さんは、海の底が砂地であるか、あるいは泥であるか、岩場であるかを知らなければなりません。それに応じて異なった種類の虫や小さな生物がいるからです。皆さんはこういうことも研究しなければなりません。ある生物は海草のある所に棲息しています。もし皆さんが小さな魚を捕ろうとしているのであれば、海底がどのようになっているかを理解しなければなりません。また岩場では釣具の重なりも重要です。ただ釣り針を下ろしただけでは、底に引っ掛かってしまいます。時にはギアを戻し、ラインを弛めれば外れるかもしれませんが、多くの場合ラインを切らなければならなくなります。

 それを防ぐために、フックと餌から下に十フィートの所に重なりを付けなさい。海底において、釣具がどういう状態になっているかを想像して、そして重なりが海の底を叩いた時にはそれを感じるようにならなければなりません。こういうことに対して敏感でなければなりません。また、フックや餌を引っ張る潮の流れについても考えなければなりません。もし流れがそれほど強くなければ、重なりの上を十フィート以上にする必要はありません。五フィートか、二フィートでも良いでしょう。このように餌がフックにどのようについているかを考えて、餌が底からどの位の高さにあるか、判断できなければなりません。

Atsuki Imamura