御旨と海 第66話

万物と心情の関係

 人間は実際には非常に敏感で、物事を知ることができる被造物です。潮流の流れや、それが今どうなっているかを経験から分かるようにならなければなりません。また流れによって、フックがラインからどのように垂れ下がるか、分かるようにならなければなりません。特に七尋(ファザム)半と十尋(ファザム)のラインがマグロを最も釣りやすいラインです。皆さんは餌とそれが水中でラインからどのように動くかについて、心の照準を向けなければいけません。皆さんはまたさまざまな関連した現象を発見するでしょう。全シーズンを通して六ないし八本のラインを使うかもしれませんが、マグロが食い付くのはたった一本のラインです。皆さんは「それはちょうどマグロにとって良い位置にあったからだ」と考えて、ラインの位置を変えるかもしれませんが、しかしそれでもそのラインにマグロが食い付くのです。このようなことを今日の科学でどのように説明しますか。

 霊界は競馬におけるダーク・ホースのようなものです。それはほとんど起こりえないようなことですが、それが起こるのです。例えば、皆さんがだれかが捨ててしまったような古いラインを拾ったとします。他の人たちがそのラインでたくさんのマグロを釣ったのですが、遂に新しいラインに付け替えました。皆さんは新しいラインを持っているけれども、その古いラインも使ってみたとします。すると突然その古いラインにマグロがかかるのです。それをどのように説明しますか。そういうことが実際に起こりました。だから先生はこういったことをも話しているのです。皆さんは魚具、フックやラインを愛さなければなりません。魚を捕るそれらの道具を大切にし、一瞬たりとも目の届かない所に置きたくないと思って、自分のベッドにそれらを持ち込むようにならなければなりません。そういった心情、そういった愛は良いことです。この愛がいたる所で結合して、そしてそれが目に見えない方法で、ほとんどありえない方法で結び付くからです。

 日本のメンバーが先生の周りに来て「ニュー・ホープ号は古い船になりました。今はもう十三年以上経っています。お父様、新しい船に変えましょう」と言います。先生は彼らの感情を傷つけたくないので、「おー、君はそう思うかね」という具合に答えています。しかし実際には「お前は何ということを言っているのだ」と思っているのです。この訓練プログラムがいかに始まったかという歴史を書くとしたら、その九九パーセントはニュー・ホープ号のことが中心になります。たとえ新しい名前の船を買ったり、あるいはだれかが我々に船を寄付してくれたとしても、その船についてはそれほど書かないでしょう。

 それはちょうど、結婚のようなものです。もし皆さんが十年間結婚して、奥さんが年を取ったとします。そうしたら皆さんはその奥さんを追い出して、新しい奥さんを迎えますか。もしそのようにしたらニュー・ホープ号はどのように感じるでしょうか。嬉しいでしょうか、悲しいでしょうか。恐らく泣き叫ぶでしょう。だから先生は次の世代の者にすべてを譲り渡す時には、新しい船に変えようと思っています。その時には、ニュー・ホープ号を引退させて特別の博物館に入れてやります。ニュー・ホープ号もこれが当たり前だと思うでしょう。船は自分が永遠に生きられないことを知っており、時が来れば交代することに同意するでしょう。先生は本当にそのように思っているのです。先生はニュー・ホープに対してそのような感受性を持っています。このことは我々すべてに言えることです。我々は、この世の人とどのように違うのでしょうか。それは心情を通してです。我々はこの世の大部分の人々がなしているのとは全く異なった心情的な世界を創ろうとしているのです。ニュー・ホープ号やワン・ホープに乗る時には、本当にそれらを愛さなければなりません。

 皆さんは船が割り当てられた時に「あー、もっと新しい船が欲しい」などと言ってはいけません。決してそのようなことを言ってはいけません。ただその船を愛しなさい。ついにはその船が愛を返して、多くの魚を捕まえてくれるでしょう。船に対して「去年、お前が良く働いてくれたことを良く知っています。今年は私がよく面倒を見てあげます。だから一つとなって成功しょう」と言ってやりなさい。

 一日の終わりに、海から帰って来る時にはチャムの場所をきれいに掃除して、悪臭を取り除き、船を手入れして本当にきれいにしなさい。そうすれば、船を見た時に気持ち良く感じるでしょう。そうすれば、船もまた立派に見えるのです。船を良く手入れをして、それを正しく取り扱いなさい。これが皆さんの責任です。日中は魚を捕ろうとして、忙しくて船をきれいにすることはできません。船もそのことはわかってくれます。しかしながら、海上でもし何か悪いことが起こったならば、たとえそれが小さなことであっても、船を手当てしなければなりません。

 二、三週間真剣に経験を積めば、皆さんはエンジンがどのような音を立てているか分かるようになるでしょう。そしてエンジンが容量を超えている時を聞き分けることができるようになるでしょう。その時にはスピードを落とさなければなりません。エンジンは人間の体の心臓のようなものです。海において、もしエンジンがだめになったならば、本当に深刻な状態に陥ります。実際にエンジンは皆さんの命より大切なのです。皆さんはそのように考えなければなりません。だから決してエンジンを酷使してはなりません。緊急事態の時はやむを得ないかもしれませんが、決して理由もないのにエンジンを酷使してはいけません。エンジンを家族のように、つまり自分の夫や妻のように愛しなさい。そうすればエンジンがだめになることはないでしょう。

 鳥が飛んで来て、自分たちが止まって休む船を探す時に、どの船を選ぶでしょうか。このことは特に小さな村に見ることができます。たくさんの家がありますが、いつも一つの家だけがたくさんの鳥たちがやって来て休むのです。そして驚くべきことに、その家は大変栄えた家です。本当です。その理由は、その家には何世代もの間蓄えられた多くの愛があるからです。

 だから我々もそういうことを心において、ムーニーの船は心情を込めて愛さなければなりません。実際先生は、今年ここへ来て皆さんに話をする必要があるかどうかと思いました。しかし、ニュー・ホープ号のことを考えて、先生は「自分は毎年、ニュー・ホープ号の所へ来たのだから、先生が来なければニュー・ホープ号は寂しく思うだろう」と思いました。先生はそんな寂しい思いをさせるわけにはいきませんでした。最近、ニュー・ホープ号はモントークという所で魚を捕っていました。しかしそれをグロースターに返すように頼みました。だからニュー・ホープ号はここへ来てから数日しか経っていません。だから先生もグロースターに来てニュー・ホープ号を訪ねることを考えざるを得なかったのです。先生は船に話しかけ、「去年の夏、私はお前と一緒にずっと毎日漁をしたが、今年はそれほど一緒漁に出ることができない。私はお前にそれを分かって欲しい」と言おうと思ったのです。ニュー・ホープ号は先生がそれほど長くそばにいられないことを分かっているだろうと思います。なぜこういうことを皆さんに言うかというと、今年は皆さんが愛するもの、すなわち皆さんの船にそのような精神を失わせてほしくないからです。船に損傷を与えてはいけません。ちょうど自分の体を守るように、思いを尽くし心を尽くして、皆さんの船の手入れをしてください。

Atsuki Imamura