自叙伝・人類の涙をぬぐう平和の母 第44話

青年の情熱は燃えたぎる松明

サミュエ•ル.ウルマンの「青春」は、私の好きな詩の一つです。中でも、「青春とは人生のある時期を意味するのではなく、心の姿勢を意味する」という句が好きです。青春とは、必ずしも若い時代だけを意味するのではありません。胸躍る思いさえあれば、年齢を問わず、誰でも青春のように若々しく生きることができるのです。

一九八四年に「世界大学原理研究会(W-CARP)」の会長となった長男の文孝進は、一九八七年、第四回総会を西ドィツの西ベルリンで開催しました。会場の外には共産主義者が集まり、激しく騒ぎ立てながら反対デモを行っていました。総会の最後に、孝進は勇敢に宣言しました。

「これから、ベルリンの壁に向かって行進します!」

反対する者たちの脅しや妨害を押し切り、二時間、行進をしてベルリンの壁に到着した彼らは、もみ合いの末、あとをついてきた共産主義者たちをみな追いやりました。孝進は涙ながらの演説を行って聴衆に感動を与え、二千人以上の若者がペルリンの壁を前にして切実な祈りを捧げて、力強い声で「私たちの願いは統一」の歌を一斉に歌いました。その祈りと歌が種となり、数年後、ベルリンの壁が崩れたのです。

その日、孝進が青年たちと共に歌った歌は、世界の歴史を大きく変える出発点となりました。青年の情熱は国境を超え、障壁も崩します。しかし、最近の一部の青年たちは、チャレンジ精神が衰えているように見えます。チャレンジ精神を持った人こそ、真の青年なのです。

昔、韓国の知恵深い先祖たちが花郎徒をつくり、青少年を修練の場に送って心身を鍛錬させたことは既に述べました。そのような伝統を、過去の遺物だといってなおざりにするのではなく、新たに蘇らせてその真の価値を見いだし、心を浄化する修練の道場としなければなりません。

私たち夫婦は、青年が現実の暗鬱さに埋没し、夢をあきらめたり、目標も持たずにさまよったりする姿を見て、非常に心を痛めました。また、正しい目標を持っていながらも、一人では手に負えずに苦労している姿を見て、彼らを助けようと心に決めました。こうして、世界の青年を一つに束ねる「世界平和青年連合(YFWP)」を創設したのです。

一九九四年、アメリカのワシントンDCに「愛天、愛人、愛国」の精神で正しい価値観を確立し、真の家庭を実現できる人間となるために、活気あふれる青年たちが集いました。このワシントンでの創設大会を皮切りに、世界に広がった世界平和青年連合は、一年も経たないうちに百六十ヵ国で支部を結成しました。短期間でそれほどまでに発展したのを見れば、青年の情熱がどれほど燃えたぎっているかがよく分かります。

これまで世界平和青年連合は、国際交流、倫理道徳の確立、真の家庭の実現に力を注いできました。また、韓国と北朝鮮の青年、世界の青年が共に集い、民族の願いであり世界平和の近道となる南北統一を成し遂げるため、誰よりも先頭に立っています。

二〇一七年二月には、「世界平和青年学生連合(YSP)」という名称で、新たな青年運動を出発しました。

心と体を磨くのは、一生をかけて行うべきことですが、特に青年期にそれを行うことは、非常に重要です。岐路に立たされたとき、利己的な欲望の道に足を踏み入れるのか、善なる夢に向かって進むのか、その方向性を決定する時期が青年期です。第二の人生が開かれるその時期に、光り輝く勇気と夢を持って、「美しい青春」を過ごさなければなりません。

青い海に未来の清々しい夢があります

私の故郷、平安南道の安州の村には、小川が流れていました。あらゆるものが凍りつく真冬を除けば、いつもせせらぎが聞こえてきました。私はその小川の水と友達になり、様々な真理を学びました。


水は常に上から下に流れます。また、水は周りに合わせて自分の姿を変えながら、すべてを包容します。さらに、水は二重性を持っています。穩やかなときは安らぎとロマンを抱かせてくれますが、怒り狂うと、あっという間にすべてを呑み込んでしまいます。ですから、その水が集まってできた海は、まさに恐ろしい存在でもあるのです。しかし私は、その海を心から愛しています。海には神様の深いみ意があり、人類の将来があるからです。

私が水を愛したように、夫も水を非常に好んでいました。私たち夫婦は忙しいスケジュールの合間を縫って、川や海に出掛けました。それは単に素晴らしい風景を楽しんだり、のんびりと釣りを楽しんだりするためではありません。世界の人々に、人類の未来は川と海にあると気づかせるためでした。

私たちは特に、南米のアマゾン川とパラグアイ川、アメリカのアラスカとハワイを海洋摂理の中心として定め、青年たちを訓練しながら、川や海の開拓に誠心誠意、取り組みました。食糧問題を解決する方法の一つとして、魚類やオキアミを利用した高タンパク食糧である魚粉(フィッシュハウダー)を生産し、貧しい国で飢餓に苦しむ人々を助けました。

二〇〇〇年代の初めからは、青く澄んだ海を擁する地、麗水を開発し、世界中の人に韓国の美しさを見てもらえるようにしました。麗水の蘇湖洞に「ジ・才丨シャン•リゾ丨^を建て、韓国を海洋レジャー産業先進国にしていく土台も築きました。麗水から入ってきて大陸に広がっていく経済の流れは、韓半島の統一と世界平和の基盤となるでしょう。


アメリカのグロスター港の近隣海域は、マグロ漁で有名な所です。荒々しいその海で、私たちは明け方から船に乗り込み、大人の背丈よりも大きなマグロと格闘しました。遠海に出てマグロを一匹釣ろうとすれば、一日中、波にもまれなければなりません。その波に身を任せ、朝から晩まで海の上に浮かんでいるのは、途方もない苦行です。

しかし、私たち夫婦はその苦行を生涯かけて行いながら、人類の救いと世界平和の道を探し求め、精誠を尽くしてきました。そのたびに、海は私に包容力を養わせ、平等に対する悟りへと導いてくれました。

また、私たちは信徒にも魚釣りの訓練をたくさんさせました。厳しい海釣りを通して、将来世界のどこに行っても活動できる指導者に育てるためでした。

アラスカのコディアク島に滞在していた時、私たち夫婦の教えを聞こうと、世界の様々な所から青年たちが訪ねてきました。私は彼らに説教や演説はせず、すぐにこう言いました。

「海に出てください。海に神様のみ言があります」

青年たちは夜も明け切らないうちに起き出すと、膝まである大きな長靴を履き、水のように冷たい冬の風に吹かれながら、遠海へ出ていきました。そうして、どこを見回しても何もない海の真ん中で、サヶやハリバットを獲るために死闘を繰り広げたのです。

ハリバットは「ォヒョウ」とも言うのですが、主に、海底に体を伏せて生息している魚です。


私はコディアクで、九十キロを超えるハリバットを釣り上げたことがあります。そこまで大きな魚になると、船に引き上げた時、甲板をものすごい力で打ちつけるのです。まつすぐ吊り下げると、女性が三人後ろにまるまる隠れ、見えなくなるほどです。鳴き声も、どれほどけたたましいか分かりません。

夜が更けてようやく釣りから帰ってきた青年たちは、体こそ疲れてくたくたになっていましたが、心は喜悦に満ちていました。たとえ魚が一匹も釣れていなかったとしても、忍耐心、激しい波に対して挑戦し克服する姿勢、自然の道理を学んだからです。私たち夫婦はそれを「アラスカ精神」と呼びました。

青年が度胸をつけたければ、海に出ればよいのです。陸地では道に沿って進んでいれば安心ですが、海はそうではありません。昨日までは穏やかな湖のようだった海が、今朝には凶暴な波が荒れ狂う海に変わるのです。その波の上で自らを厳しく訓練する青年であってこそ、遠大な夢を成し遂げることができます。

西洋に、「一匹の魚を与えれば一食食べられるが、魚の獲り方を教えれば一生食べられる」ということわざがあります。釣りさえできれば、飢え死にすることはありません。飢えに苦しむアフリカにも川や湖があります。ですから、魚の獲り方を教え、養殖する方法を教えてあげればよいのです。私たち夫婦は、そのような仕事にずっと前から取り組んできました。

私が海を愛する理由は、それが強靱な心と体を育ててくれるからだけではなく、人類の未来


がまさに海にあるからです。海は陸地よりもはるかに広大です。深い海の底には、私たちがいまだ知らない宝物が眠っています。海を開拓する人が、世界を導く人になるのです。

海は青いです。青春も青いです。この二つが出合えば、未来が変わります。私がそうだったように、青年は腕をまくって海に飛び込む、勇猛な人にならなければなりません。

Luke Higuchi